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指令センターで働くためには?通信指令員を徹底解説!
消防車や救急車がサイレンを鳴らして現場へ急行する光景は誰もが目にしたことがあると思います。
しかし、その出動のはじまりがどこかご存じでしょうか?
火災や事故、病気などの緊急時にかけられる119番通報。その第一声を受け止め、冷静かつ迅速に対応するのが通信指令室です。
2025年に放送された月9ドラマ『119エマージェンシーコール』では、この通信指令室にスポットが当てられ高評価を得ました。
まさに見えない最前線として、人々の命を守る要である通信指令室。
今回は消防士として国際消防救助隊や緊急消防援助隊の出動経験もある専任教員の大﨑と現在17もの都道府県の消防学校で通信指令の教育を行っておられる北小屋裕さんが通信指令室について徹底解説します。
消防のブレイン『通信指令システム』
通信指令室はいわば消防組織のブレインと言っても過言ではありません。119番通報の受付を行うだけではなく、出動した隊への的確な指示や支援情報も必要です。そのような業務を的確かつ迅速に可能とする様々なシステムが構築されています。
(参考:『西宮市消防局 消防緊急情報システム』)
どのようなシステムがあるか詳しく説明します。
統合型位置情報通知装置
通報者が動揺していたり自分の居場所が分からなかったりなど、正確な位置情報や得られない場合でも本システムにより通報地点を素早く特定できます。
複数目標物検索機能
通報者が自分の居場所がわからない場合、そこから見える複数の目標物をもとにエリアの絞り込みを行うことができます。
通報者から得られる断片的な情報からでも素早く特定できます。
自動出動指定装置
出動車両運用管理装置で管理している各車両の情報や災害の規模等の情報から災害現場に近い最適な車両を自動的に選別し迅速な出動指令を行います。
受付補助装置
指令装置で作成した手書きの情報を指令書に印字させて画像を車両運用端末装置に直接送ることができます。
現場隊員が必要としている情報をより正確に伝達することができます。
NET119受信装置
聴覚障がいや音声・言語機能障がいで音声通報が困難な方のためにスマートフォンを活用して119番通報を受信する装置です。
GPSによる位置情報から通報場所を特定できるなど必要最低限の操作だけで通報内容を伝えることができます。
車両運用端末装置
現場隊員が必要とする指令情報や地図情報、現場までの最短ルートや傷病者情報といった様々な支援情報をリアルタイムに表示することができます。
口頭指導やLive119
ドラマでも通信指令員が声だけで心肺蘇生法などの応急手当を通報者に伝えていました。
このような行為を口頭指導と呼んでいます。「何をしたら良いかわからない」という事態でも的確な指示で誘導します。
口頭指導はマニュアル化されていますが、このような場面でも救急救命士資格を持った通信指令員となれば強みとなります。
また、最近ではLive119といって通報者からリアルタイムな映像を通信指令室に送ることによってより確実に現場の状況を確認できるシステムが構築されています。
通信指令員
通信指令室で働いているのも消防士です。その消防士のことを通信指令員と呼んでいます。
通信指令員の仕事は多岐にわたります。通報を受けると同時に通報内容の聞き取りと状況の判断を行い、消防隊や救急隊の出動を指示します。
また、現場に向かう隊員に最新の情報を逐一共有、通報者や関係者との連絡を保ち続けることも求められます。
限られた時間と情報の中でどれだけ正確に状況を把握し、適切な支援につなげられるかが生死を分ける鍵となります。
ドラマの中では通報者がパニック状態に陥っている場面も多く描かれました。
火災の煙で「視界が利かない」「家族が意識を失っている」「小さな子どもからの助けを求める電話」等の緊迫した状況に通信指令員たちは声だけを頼りに寄り添いながら、冷静に指示を出していきます。そこには人と人とのつながりが何より大切です。
通信指令員になるためには
通信指令員も消防士であるため、自治体の消防職員採用試験に合格する必要があります。
そして消防学校で初任教育を受ける必要があります。その後消防隊員や救急隊員として消防署で勤務し、異動の辞令により通信指令員となることができます。
通信指令教育の第一人者『北小屋裕さん』からメッセージ
北小屋裕さん
消防救急救命士として熊本県と和歌山県の消防で勤務された後に救急救命士養成に尽力されました。
現在は民間救急企業の役員を務める傍ら、17都道府県の消防学校の通信指令教育を担われております。
通信指令教育の第1人者として日々、通信指令員の知識技術の向上に努めている北小屋さんは『通信指令員』をこのように語ります。
ことばで命をつなぐプロフェッショナルが通信指令員です。
【119番】ほぼすべての人が知っている助けを呼ぶための電話番号です。
通信指令員は短い数秒の単位で相手の状況を把握し、不安に慄いた通報者に寄り添いつつ的確なアドバイスを伝える存在です。
命の灯が消えかけている傷病者に救命のファーストランナーとして、口頭指導などで命のバトンを救急隊に繋ぐ重要な部署が通信指令です。
今まさに消えつつある命を、ことばで救うことができる唯一部署と言えます。
まとめ
消防の現場は、最前線で活躍する人たちが注目されがちですが、その背後には声で支え続ける通信指令員の存在があります。
彼らの冷静な判断と迅速な対応があってこそ、現場の活動は円滑に進みます。
『119エマージェンシーコール』は、そうした縁の下の力持ちのリアルな姿を教えてくれました。
災害や事故のたびに多くの命がその声に支えられています。
人の声の力、技術と知識、そして思いやりで最大限に引き出す通信指令員。
ぜひ一緒に目指してみませんか?
東洋医療専門学校は消防採用実績が西日本No.1であり救急救命士の国家資格も取得できます。
救急救命士・医療従事者としての知識を通信指令員としてぜひ活かしてください。