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胃痛に効くツボ6選|詳しい場所の探し方・押し方・注意点
突然のキリキリとした痛み、シクシク続く不快感、食後の重苦しい胃もたれ…。
多くの方が経験する「胃痛」は、本当につらいものですよね。原因はストレスや暴飲暴食、生活習慣の乱れなど様々ですが『少しでも楽になりたい』というのが切実な願いだと思います。
そんな時、東洋医学の知恵である「ツボ(経穴)」を使ったセルフケアを試してみませんか?特別な道具もいらず、いつでもどこでも手軽に行えるのが魅力です。
この記事では、鍼灸師を育成する専門学校である東洋医療専門学校が、胃痛緩和に効果が期待できる代表的なツボ5つについて、探し方と、効果的な押し方のコツ、そして安全に行うために重要な注意点を詳しく解説します。
目次
【最重要】ツボ押しを行う前の注意点
ツボ押しは手軽ですが、安全に行うことが最も大切です。以下の点を必ず守ってください。
- 強く押しすぎない
「痛気持ちいい」と感じる程度が目安です。強い痛みを感じる場合はすぐに中止してください。 - 体調が悪い時は避ける
発熱時、体力が著しく低下している時、飲酒後などは行わないでください。 - 食後すぐは避ける
食後30分~1時間は避けましょう。 - 妊娠中の方
自己判断せず、必ず医師や専門家にご相談ください。特に刺激が強くなるものは注意が必要です。 - 皮膚に異常がある部位
傷、湿疹、炎症などがある場所やその周辺は押さないでください。 - 重篤な疾患がある方
心臓病や悪性腫瘍など、重篤な病気をお持ちの方は、必ず主治医にご相談の上で行ってください。 - 効果には個人差があります
ツボ押しの効果の感じ方には個人差があります。 - 症状が悪化した場合
万が一、ツボ押しによって症状が悪化したり、気分が悪くなったりした場合は、すぐに中止してください。 - 医療行為ではありません
ツボ押しはあくまでセルフケアの一環であり、医療行為ではありません。症状が改善しない、または悪化する場合は、絶対に自己判断せず、速やかに医療機関(消化器内科など)を受診してください。
ツボ押しの基本:効果を高めるコツ
ツボ押しを行う際は以下の点を意識するとより効果的です。
- タイミング
リラックスしている時(入浴後や就寝前など)がおすすめです。 - 姿勢
楽な姿勢で行いましょう。座っていても寝ていても構いません。 - 呼吸
ゆっくりと自然な呼吸を続けながら行います。息を吐きながら押し、吸いながら緩めるのが一般的です。 - 押し方
指: 主に親指の腹を使いますが、ツボによっては人差し指や中指を使っても良いでしょう。爪を立てないように注意してください。
圧: 皮膚に対して垂直に、ゆっくりと圧を加えていきます。「痛気持ちいい」と感じる強さで止め、そのまま一定の圧を保ちます。
時間・回数: 1ヶ所につき、5秒~10秒程度押し、それを3~5回繰り返すのが目安です。体調に合わせて調整してください。 - 左右
手足など左右対称にあるツボは、両方行うとより効果的です。
胃痛に効くツボ:手・腕
まずは、手や腕にある押しやすいツボからご紹介します。
(1) 合谷(ごうこく)
万能ツボとも呼ばれ、胃痛だけでなく頭痛や肩こり、ストレス緩和など様々な不調に用いられます。
- 場所の探し方:
1. 手の甲側で、親指と人差し指の骨が交わる手前のくぼみにあります。
2. 人差し指の骨(第二中手骨)の真ん中あたり、親指側に少し寄ったところを探します。
3. 押してみて、ズーンと響くような感覚(得気:とくき)がある場所が合谷です。 - 押し方:
1. 反対側の手の親指を合谷にあて、人差し指は手のひら側に添えます。
2. 親指で、人差し指の骨に向かって少し押し上げるようなイメージで、痛気持ちいい強さで5秒ほど押します。
3. ゆっくりと力を抜き、これを3~5回繰り返します。
4. 反対側の手も同様に行います。 - 期待できる効果:
胃痛、胃もたれ、ストレス性胃痛、頭痛、歯痛、便秘など。 - 注意:
妊娠中の方は刺激を避けた方が良いとされるツボです。
(2) 内関(ないかん)
乗り物酔いや二日酔いの吐き気にもよく使われるツボで、胃の不快感や吐き気を伴う胃痛におすすめです。
- 場所の探し方:
1. 手のひら側の手首の付け根にある太いシワの中央を探します。
2. そこから指3本分(自分の人差し指・中指・薬指の幅)肘側に向かったところにあります。
3.腕の真ん中にある2本の太い腱(長掌筋腱と橈側手根屈筋腱)の間にあります。
4.押してみて、少し響くような感覚がある場所です。 - 押し方:
1. 反対側の手の親指を内関にあてます。
2. 息を吐きながら、腕の中心に向かって垂直に、痛気持ちいい強さで5秒ほど押します。
3. 息を吸いながらゆっくり力を抜きます。これを3~5回繰り返します。
4. 反対側の腕も同様に行います。 - 期待できる効果:
吐き気、嘔吐、胃痛、胸焼け、乗り物酔い、二日酔い、精神安定など。
胃痛に効くツボ:足
足にも胃腸の働きを整える重要なツボがあります。
(3) 足三里(あしさんり)
松尾芭蕉が「おくのほそ道」の旅で、足の疲れをとるために灸をすえたとされる有名なツボ。胃腸の調子を整える代表的なツボです。
- 場所の探し方:
1. 膝のお皿のすぐ下、外側のくぼみを探します。(犢鼻:とくび と呼ばれるツボ)
2. そのくぼみから、指4本分(自分の人差し指から小指までの幅)下がったところにあります。
3. すねの骨(脛骨)の外側にある、太い筋肉(前脛骨筋)の上にあります。
4. 押してみて、ズーンと響くような感覚がある場所です。椅子に座ると見つけやすいです。 - 押し方:
1. 椅子に座り、膝を軽く曲げます。
2. 両手の親指を重ねて足三里にあてるか、押しやすい方の親指を使います。
3. 息を吐きながら、すねの骨に向かって垂直に、少し強めに(痛気持ちいい範囲で)5~10秒ほど押します。
4. 息を吸いながらゆっくり力を抜きます。これを3~5回繰り返します。
5. 反対側の足も同様に行います。 - 期待できる効果:
胃痛、胃もたれ、食欲不振、下痢、便秘、足の疲れ、全身の倦怠感、体力増強など。
(4) 梁丘(りょうきゅう)
急な胃の痛みや痙攣(けいれん)を和らげるのに使われることがあるツボです。
- 場所の探し方:
1. 膝のお皿のすぐ上の外側の角(くぼみ)を探します。
2. そこから指3本分(自分の人差し指・中指・薬指の幅)太ももを上がったところにあります。
3. 太ももの前側にある大きな筋肉(大腿直筋)の外縁(少し外側)にあります。
4. 押してみて、少し痛みを感じる場所です。 - 押し方:
1. 椅子に座るか、仰向けに寝て膝を軽く立てます。
2. 両手の親指を重ねて梁丘にあてます。
3. 息を吐きながら、太ももの骨に向かって垂直に、痛気持ちいい強さで5秒ほど押します。
4. 息を吸いながらゆっくり力を抜きます。これを3~5回繰り返します。
5. 反対側の足も同様に行います。 - 期待できる効果:
急な胃痛、胃痙攣、膝の痛みなど。
胃痛に効くツボ:お腹
お腹にあるツボは、直接胃に働きかける効果が期待できます。
(5) 中脘(ちゅうかん)
胃の不調全般に使われる、お腹の中心にある重要なツボです。
- 場所の探し方:
1. 体のおへそと、胸骨の下端(みぞおち)を結んだ線の真ん中にあります。
2. 仰向けに寝て、お腹の力を抜くと見つけやすいです。 - 押し方:
1. 仰向けに寝て、膝を軽く立てるとお腹が緩みます。
2. 人差し指と中指、または両手の中指を重ねて中脘にあてます。
3. 息をゆっくり吐きながら、お腹がへこむのに合わせて、垂直に優しく押していきます。痛みがなく、心地よい圧を感じる程度で止めます。(お腹のツボは特に優しく)
4. そのままの圧で、ゆっくり5~10回ほど深呼吸します。
5. 押している指で小さく円を描くようにマッサージするのも良いでしょう。 - 注意:
食後すぐや満腹時は避けてください。優しく押すことを心がけてください。
(6) 不容(ふよう)
胃の働きを調整し、胃痛や吐き気、食欲不振などに用いられるツボです。
- 場所の探し方:
1. まず「中脘(ちゅうかん)」(おへそとみぞおちの中点)を見つけます。
2.. その中脘から、左右それぞれ外側に指2本分(自分の人差し指・中指の幅)移動したところにあります。
3. 肋骨(あばら骨)の一番下のラインのすぐ下あたりになります。
4. 仰向けに寝て、お腹の力を抜くと見つけやすいです。左右両方にあります。 - 押し方:
1. 仰向けに寝て、膝を軽く立てるとお腹が緩みます。
2. 両手の人差し指か中指の腹を、左右の不容にそれぞれあてます。
3. 息をゆっくり吐きながら、垂直にごく優しく押していきます。肋骨に近いので、絶対に強く押さないでください。 軽く圧を感じる程度で止めます。
4. そのままの圧で、ゆっくり5~10回ほど深呼吸します。
5. 指で優しく円を描くようにマッサージするのも良いでしょう。 - 注意:
食後すぐや満腹時は避けてください。肋骨を押さないよう、ごく優しく押すことを徹底してください。 - 期待できる効果:
胃痛、吐き気、嘔吐、食欲不振、胸焼け、しゃっくりなど。
症状別おすすめツボ(目安)
胃の痛みの症状にあわせておすすめのツボをご紹介します。
ただし、こちらはあくまで目安です。心地よいと感じるツボを押すのが基本と覚えておきましょう。
- キリキリとした急な痛み: 梁丘、足三里
- シクシク続く鈍い痛み: 中脘、足三里
- 胃が重い、胃もたれ: 足三里、中脘、合谷
- 吐き気を伴う: 内関、中脘
- ストレスを感じている時: 合谷、内関、足三里
セルフケアの限界と受診の目安
ツボ押しは手軽なセルフケアですが、万能ではありません。 以下のような場合は、絶対に自己判断せず、必ず消化器内科などの医療機関を受診してください。
- 痛みが非常に強い場合
- 痛みが長時間続く、または悪化する場合
- ツボ押しをしても全く改善しない場合
- 胃痛以外の症状(発熱、嘔吐、吐血、下血、体重減少など)を伴う場合
- これまで経験したことのないような痛みの場合
これらの症状は、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、逆流性食道炎、胃がん、さらには心臓や胆のうなどの病気が隠れている可能性もあります。早期発見・早期治療が何よりも大切です。
日常生活でできる胃痛予防・対策
ツボ押しと合わせて、日頃から胃に優しい生活を心がけることも重要です。
- 食事:
○ 暴飲暴食を避け、腹八分目を心がける。
○ よく噛んでゆっくり食べる。
○ 消化の良いもの(おかゆ、うどん、白身魚、豆腐など)を選ぶ。
○ 刺激物(香辛料、カフェイン、アルコール、炭酸飲料)、脂っこいもの、冷たいものの摂りすぎに注意する。
○ 食事時間を規則正しくする。 - ストレスケア:
○ 十分な睡眠をとる。
○ 軽い運動(ウォーキングなど)やストレッチで気分転換する。
○ 趣味やリラックスできる時間を作る。
○ 深呼吸や瞑想なども効果的です。 - 生活習慣:
○ 禁煙を心がける。
○ 適度な運動を習慣にする。
○ 体を冷やさないようにする(特に腹部)。
東洋医学では、胃腸は「気(エネルギー)」や「血(血液と栄養)」を作り出す源と考えられています。生活習慣を整え、胃腸を健やかに保つことが全身の健康に繋がります。
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