救急救命士と消防士の違いって何?
「救急救命士」が消防署で働いているって聞いたことあるけど、「消防士」と何が違うの?と疑問の声もよく聞かれます。
ここでは救急救命士と消防士の関係性や仕事内容などについて解説していきます。
救急救命士と消防士の関係
まず、「消防士」とは誰を指すのでしょう。多くの人は、消防士=消火・救急・救助などの業務を行う消防職員というイメージではないでしょうか?正しくは、そういった業務を行う消防職員を「消防吏員」と呼びます。消防吏員には10階級あり、一番下の階級を「消防士」と呼びます。ただし、現在は「消防士」という呼び方が、消防吏員全体を含んだ意味で使われることが多いため、本稿でも消防士=消防吏員として解説していきます。
次に「救急救命士」とは誰のことを指すのでしょう。「救急救命士」とは国家資格の名称で、救急救命士の国家試験に合格した人を指します。消防署で働いていなくても国家資格を取得していれば、「救急救命士」と名乗ることが可能です。
では、なぜ多くの方が救急救命士=消防士と思うのでしょうか。
救急救命士という資格ができた背景に関わりがあります。
自動車の普及が進んだ昭和時代、交通事故による死亡者が増加しました。そのため消防署に救急車が配置されるようになり、救急車が急病者や傷病者を病院まで運ぶことが可能になりました。その後、救急車の需要の高まりとともに専門性が求められる救急活動も増えていきました。救命率向上のため、1991年アメリカのパラメディック制度を参考に救急救命士法が制定され、所定の教育・訓練を受けて資格を取得した消防士が、現場で高度な医療処置を行えるようになりました。
このように救急救命士は消防士のために作られた資格だったため、救急救命士=消防士というイメージがついたと思われます。
現在も救急救命士の主な就職先は消防署となりますが、民間の医療機関や自衛隊、海上保安庁、警察など活躍の幅はどんどん広がっています。
消防士は救急救命士の資格を取得している消防士(救急現場で特定の医療処置を行える)と救急救命士の資格を取得していない消防士(救急現場では応急処置のみ)に分かれ、また消防以外で働いている救急救命士も存在するということです。
消防士の仕事内容
救急救命士の資格取得にかかわらず、地方公務員試験に合格し消防署に採用され、消防学校を卒業すると晴れて消防士(消防吏員)となります。消防士は、消防隊員、レスキュー隊員、救急隊員の3つに分かれて配属されます。
・消防隊員
消防隊員の最も大きく取り上げられる仕事が「火災への対応」です。火災が起きた時、消防士は通報を受けて現地に駆けつけ、速やかに消火や救助活動に当たります。彼らの活動は「現場」だけではありません。火災の原因を調査したり、被害を最小限にするために、平時から予防対策を周知・徹底させるのも消防士の役目です。災害に対する啓蒙活動を行なったり、火災報知器の設置義務が守られているかをチェックすることもまた、消防隊員の仕事です。
・レスキュー隊員(特別救助隊)
地震や洪水などの自然災害や火災・交通事故、水難事故・山岳事故などの現場で人命を救助するのが仕事です。困難な現場で救助活動を行うレスキュー隊員には、体力や運動能力はもちろん、精神力・判断力・技術力・チームワーク力など高い能力が求められます。消防署が設ける選抜試験に合格し厳しい訓練を受け、予備隊員を経てレスキュー隊員になることができるのです。
・救急隊員
119番の連絡が入ると救急車で現場に駆けつけ、病人や怪我人を救急車で病院へ搬送しながら応急処置を施します。一分一秒を争う現場の多い救急隊員には、冷静な観察力・判断力・豊富な医療知識と経験が求められます。救急隊員は3人1組で一台の救急車に乗り込みます。その3人のうち最低1人は救急救命士の資格を持つ者と決められているなど、救急救命士の資格が最も活かされる場所が救急隊員となります。
救急救命士ができること
「救急救命士」の業務範囲は救急救命士法により細かく定められています。医師の指示の下家族の同意を得た上で行うことができる救急救命処置を「特定行為」と言い、以前はこの特定行為は限定的でしたが、医療の進歩と何度かの法改正を経て、現在は対応できる範囲が非常に広くなりました。例えば、心肺停止前の人に対する静脈路確保(輸液をするための道を確保すること)や輸液(人体に必要な液体を入れること)が2014年に特定行為として制定され、救急救命士はより多くの人に対して救命処置が行えるようになりました。
※特定行為の詳しい解説は次回の「救急救命士が行う特定行為とは?」で行います。
業務範囲の拡大とともに、心肺停止の患者の救命率や社会復帰率の向上につながっています。
このように一分一秒を争う命の現場では、救急救命士の資格を取得していることがとても強い武器となることは間違いありません。
救急救命士になるには?
消防署で活躍する救急救命士になるには、「消防士(地方公務員試験)」と「救急救命士(国家試験)」の両方の試験に合格する必要があります。
これには、大きく分けて2つのルートがあります。
1.消防士→救急救命士
まずは消防士になるための採用試験をクリアして、その後に救急救命士の資格を取るルートです。
この場合は、まずは消防士として救急業務に一定期間(5年もしくは2000時間以上)にあたる必要があります。その後、救急救命士になるための研修を半年以上行うことで国家試験にチャレンジできるようになり、合格すれば救急救命士として働けるようになります。このルートは研修中も仕事の一部とされるため、学費や研修中の給料が支給される金銭的なメリットがありますが、一般的に10年近い期間がかかる上、研修を受けるためには消防署内での高い倍率の選考をクリアしないければならないため狭き門となっています。
2.救急救命士→消防士
もう1つのルートは、救急救命士の資格を得てから、消防士になるという方法です。
この場合は、救急救命士の養成課程のある大学や専門学校で2年以上の修学期間を過ごしたのち、国家試験に受験し合格を目指します。その後、消防士になるための採用試験に合格することで「救急救命士で、かつ消防士」になることができます。①のルートに比べ、より早く救急救命士として活躍することができる上、消防本部にとっても救急救命士養成のための費用が削減されるため、現在はこの流れが増えています。
まとめ
救急救命士とは国家資格の名称で、主に救急活動に携わる消防士のために作られました。病院への搬送中に医師の指示の下医療行為を行うことができる救急救命士のおかげで、救命率の向上に繋がっています。3人1組の救急隊員のうち1名以上は救急救命士であると定められているように、救急現場にとって無くてはならない資格となっています。また現在では、民間の医療機関など消防署以外での活躍も増えています。
消防署で活躍する救急救命士になるためには、①消防士の採用試験を突破し、救急隊員としての経験を積んだのち国家資格を取得する方法と、②国家資格を取得してから、消防士の採用試験を突破する方法の2通りがありますが、現在は②のルートが一般的となっています。②のルートで消防署で活躍する救急救命士を目指すためには、公務員試験と救急救命士の国家試験、両方の試験を突破する必要があります。
東洋医療専門学校の救急救命士学科では消防署で活躍する救急救命士の育成を行なっています。国家試験対策はもちろん、同時に消防本部に特化した公務員試験対策も行なっています。そのため、救急救命士の学校と合わせて公務員対策の学校に通う必要はありません。また現場経験豊富な元消防職員の教員が最新の資機材を用いて現場に活きる実習を行います。即戦力として活躍できる救急救命士を目指すなら是非ご検討ください。
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